福祉施設の開設に必要な消防設備|デイサービス・グループホーム別に解説

デイサービスやグループホームの開設準備では、物件探し・スタッフ採用・指定申請など多くのタスクに追われます。そのなかでも特に見落とされがちな重要ポイントが「消防対策」です。
福祉施設は、自力での避難が難しい方が利用するため、消防法上、一般的な住宅や事務所よりもはるかに厳しい安全基準が定められています。
特に戸建て住宅や空き店舗を改修(リノベーション)する場合、「既存の建物だからそのまま使える」とは限りません。想定外の消防設備工事が必要になると、工期の遅延による開設日の延期や、予算オーバー(資金計画の狂い)に直結します。
リスクを防ぐためにも、物件の契約前に確認しておくことが大切です。静岡・山梨エリアで消防設備の点検・工事・届出をワンストップで支援する「ニッセー防災」が、福祉施設の開設に必要な設備と手続きの要点を分かりやすく解説します。
デイサービス・グループホームの開設準備中の方へ。
必要な消防設備と届出は、ニッセー防災にご相談ください。

まず確認したいのは「(6)項ロ」か「(6)項ハ」か

福祉施設の消防設備について、必ず目にするのが「(6)項ロ(ろっこう ろ)」や「(6)項ハ(ろっこう は)」という言葉です。
これは、消防法で決められた「建物の使い道(用途)による分類」のようなものです。この区分や施設の広さによって、「どんな消防設備を設置しなければならないか」のルールが決まります。
分類の中の「(6)項」は、病院や福祉施設、幼稚園などが属するグループです。そして、福祉施設の多くは「自力で逃げられる人が多いか、手助けが必要な人が多いか」によって、主に次の2つのどちらかに分かれます。
- (6)項ロ…火災のときに自力で避難することが難しい方が入居・宿泊する施設(認知症高齢者グループホーム、特別養護老人ホーム、要介護3以上の方が主に入居する有料老人ホームなど)
- (6)項ハ…(6)項ロにあたらない福祉施設(デイサービス、就労継続支援などの通所の事業所、(6)項ロにあたらない障がい者グループホームなど)
(6)項ロのほうが基準が厳しく、小規模な建物でもスプリンクラー設備や自動火災報知設備が原則として必要になります。どちらの区分になるかで、工事費や開設までのスケジュールが大きく変わります。
(6)項ロ——自力で避難することが難しい方が入居・宿泊する施設
(6)項ロは、火災のときに自力で避難することが難しい方が入居・宿泊する施設です。
- 認知症高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
- 特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、ショートステイ(老人短期入所)
- 有料老人ホーム・軽費老人ホーム・小規模多機能型居宅介護のうち、避難が困難な要介護者(要介護3〜5の方)を主として入居・宿泊させるもの
障がいのある方の施設では、「障害者支援施設」「短期入所」「共同生活援助(障がい者グループホーム)」のうち、避難が難しい方(障害支援区分4〜6の方)を主として受け入れる施設が「(6)項ロ」に該当します。
(6)項ハ——デイサービスなど通所が中心の施設
(6)項ハは、(6)項ロにあたらない福祉施設です。
- デイサービス(老人デイサービスセンター・老人デイサービス事業)
- (6)項ロにあたらない有料老人ホーム・小規模多機能型居宅介護など
- 生活介護・自立訓練・就労移行支援・就労継続支援などの通所の事業所
- (6)項ロにあたらない障がい者グループホーム
区分は「利用者の状態」で変わることがある
注意したいのは、同じサービス形態であっても、利用者の「要介護度」や「障害支援区分」によって(6)項ロにも(6)項ハにもなり得るという点です。
一般的な判断の目安として、以下の基準を超えると「(6)項ロ」として扱われる考え方が示されています。
- 高齢者施設: 要介護3以上の方が「定員の半数以上」
- 障がい者施設: 障害支援区分4以上の方が「おおむね8割超」
ただし、将来的な利用者の入れ替わりや区分の変更などをどう見込むかは、所轄の消防署が個別の事情を踏まえて判断します。「うちは(6)項ハのはず」と思い込まず、物件の契約や工事を進める前に、必ず所轄の消防署へ事前相談・確認をしてください。
(6)項ロ・(6)項ハで必要になりやすい消防設備

主な設備の設置基準を、原則の考え方で比較しました。実際には建物の構造・階数・無窓階かどうか・複合用途かどうかなどで変わり、例外や特例もあります。
| 設備・義務 | (6)項ロ(認知症高齢者グループホームなど) | (6)項ハ(デイサービスなど) |
|---|---|---|
| 消火器 | 延べ面積にかかわらず必要 | 延べ面積150㎡以上で必要(地階・無窓階・3階以上の階は床面積50㎡以上で必要) |
| スプリンクラー設備 | 原則必要(構造などにより不要となる場合あり・後述) | 大規模な建物(平屋建て以外で床面積の合計6,000㎡以上など)や11階以上の建物などで必要 |
| 自動火災報知設備 | 延べ面積にかかわらず必要 | 利用者を入居・宿泊させるものは面積にかかわらず必要。それ以外は延べ面積300㎡以上で必要 |
| 消防機関へ通報する火災報知設備 | 原則必要(自動火災報知設備と連動させる) | 延べ面積500㎡以上で必要 |
| 誘導灯 | 原則必要 | 原則必要 |
| 防炎物品(カーテン・じゅうたん等) | 防炎性能のあるものを使用 | 防炎性能のあるものを使用 |
| 防火管理者の選任 | 収容人員10人以上 | 収容人員30人以上 |
このほか、屋内消火栓設備(延べ面積700㎡以上など。建物の構造により基準が緩和されます)や避難器具(階ごとの収容人員などで判断)が必要になる場合もあります。予定している建物の階数・面積・フロアごとの用途を入力すれば、消防設備 かんたん自動診断で必要になりそうな設備の目安を確認できます。
グループホームはスプリンクラーが原則必要——平成27年の改正

以前は、(6)項ロの施設でもスプリンクラー設備が必要になるのは延べ面積275㎡以上の場合でした。その後の消防法施行令の改正により、平成27年(2015年)4月1日から、(6)項ロの施設は原則として延べ面積にかかわらずスプリンクラー設備が必要になりました。あわせて、自動火災報知設備が(6)項ハの宿泊・入居のある施設にも広がり、(6)項ロの消防機関へ通報する火災報知設備は自動火災報知設備と連動して作動するものとされました。
既存の施設には平成30年(2018年)3月31日までの経過措置がありましたが、すでに終了しています。これから開設する施設は、改正後の基準に合わせる必要があります。
スプリンクラーが不要になる場合
(6)項ロでも、次のような場合はスプリンクラー設備が不要になることがあります。
- 延焼を抑える構造の場合…居室を一定の防火性能をもつ壁・床で区画し、内装を燃えにくい材料で仕上げ、開口部に防火戸を設けるなど、総務省令の基準を満たす構造であるもの
- 障がい者施設で、延べ面積275㎡未満のもの…障害者支援施設・障がい者グループホームなどでは、「介助がなければ避難できない方」を主として入所させる施設でなければ、延べ面積275㎡未満のものはスプリンクラー設備が不要とされています
「介助がなければ避難できない方」かどうかは、障害支援区分の認定調査項目(移乗・移動・危険の認識など6項目)をもとに判断します。消防庁の資料では、これらに該当しない方などが利用者の2割以上いればスプリンクラー設備を要しないという目安が示されています。
なお、認知症高齢者グループホームなど高齢者向けの(6)項ロには、この「275㎡未満」の扱いはありません。どちらの例外も、構造や利用者の状況を証明する資料が必要になり、判断には専門的な確認が伴います。例外・特例に当てはまるかどうかは、設計段階で所轄の消防署に相談してください。
デイサービス((6)項ハ)の主な基準
通所中心のデイサービスは、(6)項ロに比べると面積による基準が中心です。小規模な戸建てを改修したデイサービスでも、次の点は確認が必要です。
- 延べ面積150㎡以上なら消火器、300㎡以上なら自動火災報知設備、500㎡以上なら消防機関へ通報する火災報知設備が必要
- 誘導灯は原則必要(避難が容易な場合などの例外あり)
- 収容人員(利用者と職員などの合計)が30人以上なら防火管理者の選任が必要。延べ面積300㎡未満なら乙種防火管理者でも選任できます
- カーテンやじゅうたんは防炎性能のあるものを使用
「面積が小さいから何もいらない」と考えがちですが、地階・無窓階(避難や消火活動に有効な窓などが足りない階)・3階以上の階にある場合は、小さな面積でも設備が必要になることがあります。
複合施設の場合は「(16)項イ」になる

1階が店舗や事務所で2階がデイサービス、共同住宅の一部の住戸をグループホームにする、といったように、建物の一部を福祉施設として使う場合は、建物全体が「複合用途防火対象物」((16)項イ)として扱われます。
複合用途の建物では、多くの設備は用途ごとの部分を1つの建物とみなして判断しますが、自動火災報知設備などは建物全体の延べ面積で判断するものもあります。そのため、施設が入ることで、ほかのテナントや住戸の部分にも設備が必要になる場合があります。建物のオーナー様・ほかの入居者様との調整も必要になるため、賃貸物件で開設する場合は契約前の確認が欠かせません。
また、(6)項ロの部分がある複合用途の建物では、防火管理者が必要になる収容人員が10人以上になるなど、建物全体の義務が変わる点にも注意が必要です。
開設までの手続きの順序——指定申請の前に消防署へ

福祉施設の開設では、介護保険や障害福祉サービスの「指定申請」と、消防の手続きを並行して進めることになります。おおまかな順序は次のとおりです。
- 物件を決める前…建物の構造・面積・階数と、想定する利用者の状態から、(6)項ロ・ハのどちらになりそうか、どんな設備が必要かのあたりをつける
- 改修工事の契約前…所轄の消防署へ事前相談。必要な設備や、工事前に必要な届出(工事等計画届など)を確認する
- 工事〜開設前…消防用設備等の工事、設置届(工事完了から4日以内)と消防署の検査、防火対象物使用開始届、防火管理者の選任届・消防計画の届出
- 指定申請…自治体の求めに応じて、消防の手続きが済んでいることを示す書類を提出
自治体によっては、指定申請の前に消防法令への適合状況の確認を求めたり、消防用設備等の検査済証や使用開始届の写しの提出を求めたりしています。消防の手続きが終わらないと指定を受けられず、開設日がずれることになります。使用開始届などの届出の名称・期限は火災予防条例により地域で異なるため、指定権者(県・市)と所轄の消防署の両方に早めに確認してください。
なお、(6)項ロの施設と、利用者を入居・宿泊させる(6)項ハの施設は、面積にかかわらず消防用設備等の設置後に消防署の検査を受ける必要があります。
開設後も続く義務——防火管理者・消防計画・避難訓練・点検
開設したあとも、消防法上の義務は続きます。
- 防火管理者と消防計画…防火管理者を選任して届け出、消防計画を作成して届け出ます。(6)項ロの施設は収容人員10人以上で甲種防火管理者が必要です
- 避難訓練…福祉施設((6)項)では、消火訓練と避難訓練を年2回以上実施することが義務付けられています。夜間の職員体制を想定した訓練も大切です
- 消防用設備点検…設備は6か月に1回の機器点検と1年に1回の総合点検を行い、特定防火対象物として1年に1回、消防署に報告します
点検の制度については、3つの点検制度の違いの記事で詳しく解説しています。
福祉施設の開設準備は、物件選びの段階からご相談ください
福祉施設の消防設備は、施設の種類だけでなく、利用者の状態・建物の構造や面積・複合用途かどうかで大きく変わります。スプリンクラー設備のように工事費や工期に影響する設備もあるため、物件の契約や改修工事の前に確認しておくことが、開設を予定どおりに進める近道です。
ニッセー防災は、静岡県(東部・伊豆・静岡市、2026年5月からは浜松支店で西部も)、山梨県全域、神奈川県西部で、消防設備の点検・工事から消防署への報告まで、すべて自社で対応しています。現場スタッフは全員が国家資格の保有者です。
介護施設での事例として、株式会社美咲ケアサービス様(静岡県駿東郡・老人ホーム)のお声をご紹介しています。
また、静岡・山梨県内初の行政書士事務所併設型の防災設備業者として、届出書類の作成と、官公署への提出手続き(併設の行政書士事務所と連携)をひとつの窓口で進められます。
「この物件で開設できるか」「(6)項ロ・ハのどちらになりそうか」という段階のご相談で構いません。現地調査とお見積りは無料です。
飲食店などほかの用途の開業については飲食店開業の消防手続き、そのほかのご質問はよくある質問のページにまとめています。
この記事の監修者

土谷 拓也(ニッセー防災行政書士事務所 代表行政書士)
静岡県行政書士会所属(登録番号 第26171501号)。行政書士・消防設備士全類(甲種特類・1〜5類、乙種6・7類)・第二種電気工事士・甲種防火管理者。
慶應義塾大学商学部を卒業後、森永製菓株式会社で法人営業を担当。2018年に消防設備業界へ転身し、同年に消防設備士全8類と電気工事士の資格を取得。2020年ニッセー防災株式会社に入社し、2026年にニッセー防災行政書士事務所を開設。消防設備と消防行政手続きの両面から、建物の防火安全をサポートしている。


